英単語レボリューションができるまで


1. 高校3年生の選択授業から生まれた
 かつてのカリキュラムで高校3年生の選択授業を担当したときから単語集作りが始まりました。その頃、私は動詞を重視した授業に取り組みました。これなら、少人数で学力差が大きい選択授業で使えると考えたからです。「動詞を制する者は英語を制する」をモットーに作った自作テキストは以下の3種類です。

 1. 動詞を分類し、図解し、意味の違いを理解する教材
 2. 高校以上のレベルの動詞を覚えるための英単語集
 3. 動詞がうまく使われている文章による実践教材

 この2番目の、動詞を覚える教材が、英単語レボリューションClassicの原型です。英単語レボリューションClassicの冒頭に「動詞を制する者は英語を制する」という文を掲げましたが、それがこの単語集シリーズの原点であるからです。

2. Classicができるまで
 ダイナミックに変化し、主語を動かし、目的語を操る動詞を覚えるためには、用例が重要です。しかも、1文に1つの動詞では効率が悪いので、1文に3つの動詞が入っている用例を集め始めました。U.S. NEWS & WORLD REPORTという雑誌の最新号の記事を読みながら、これは使えるぞという文をパソコンに打ち込んで入力。あるいは、ニクソン大統領の側近であったCharles Colsonが書いた英語は一流の言い回しだと思って、丸1冊動詞に印をつけながら読んだりもしました。こんな調子で1文に3つないし2つの動詞が入っている文がたちまち増えていきました。1993年頃のことです。

 ところが、数が増えれば増えるほど、重複する動詞が出てきて、それがなかなか厄介。ここから、難解なパズルを解くような格闘がはじまりました。

 その後、幸いにも私は2つの大きな武器を手にすることができました。1つはelibraryというインターネット上の検索サイト。もう1つは、Jeditという、1995年頃に出たMacintoshパソコンで動き高速検索が可能なテキストエディタソフトです。

 elibrary(のちのHigh Beam Research)は、英語圏の新聞や雑誌からキーワード検索ができる魅力的なサイトでした。その当時は、年間100ドル程度で契約することができました。動詞を入力すると、ワシントンポストやU.S. NEWS & WORLD REPORT、あるいはCBSやABCのニュース番組のスクリプトなどの用例が出てきます。ここから、覚えやすそうな文をコピーしてためていったのです。

 Jeditにより、1万ページを超えるような膨大なデータを高速で検索できました。当時のパソコンのスペックを考えると、あれだけ軽くて速いソフトはかなりの優れものでした。このソフトにさまざまな文章を張りつけていき、自分専用の百万語級の「コーパス」を作っていきました。

 さらにclosed captionを取り込む装置を購入して、私の映画ビデオコレクションから、ビデオのスクリプトを丸ごとパソコンに取り入れたり、ネット上に存在した映画のスクリプトを収集するなどして、100本以上の映画のスクリプトをJedit上に載せ、検索できるようにもしました。

 また、ABC Nightlineという、報道解説番組のスクリプトをネット上で無料で手に入れることができるようになったので、これを3年分収集しました(のち有料となり、収集をストップせざるを得なくなりました)。この番組はTed Koppelという解説者の英語が見事で、番組内容もよく、とても良質の英語を収集することができました。

 こうした収集ができたのも、インターネットとパソコンの進化があってのことで、とてもありがたいことでした。1つの単語に対する多くの用例が見つけることが容易にできるようになりました。こうした文を取捨選択して、動詞を覚える単語集を作りました。それをまとめて、ページメーカーというソフトでレイアウトし、学校の印刷機で印刷して製本して生徒に配り、毎週テストをして活用しました。このテキストを毎年のように改訂して進化させました。

3. 動詞と名詞のコロケーションを活用した単語集作り
 Classicの次にとりくんだのがRenaissanceです。動詞と名詞を連結して覚える、動詞と名詞のコロケーション(連語)で覚える単語集作りです。

 この2番目の単語集でこだわったのは、1冊目の動詞編に登場した動詞をすべて使って、それぞれの動詞が名詞と結びつくコロケーションの用例を見つけることでした。また、各動詞に2つのコロケーションの用例をつけることでした。これもまた難解なパズルを解くような作業でしたが、約1,000の動詞に対して、名詞を2,000ほどリストアップし、動詞と名詞の組み合わせ作業ができました。動詞と名詞のコロケーション編は2冊の本になりました。

4. 形容詞や副詞
 動詞、名詞を覚えれば、次は形容詞。はじめは、名詞2000語に対し、形容詞1000とし、形容詞が2回登場するようにしました。しかし、いざ形容詞を1000そろえたところ、形容詞のレベルが高すぎることに気づきました。これでは駄目です。そこで、形容詞を2回登場させるという考えを捨て、名詞と名詞の組み合わせを入れたり、形容詞と副詞のコロケーションを加えたりして、形容詞のレベルを動詞や名詞のレベルにあわせることができました。

5. 南雲堂が評価
 南雲堂の編集部長の青木氏がこの単語集を評価して下さり、話がとんとんとすすんで南雲堂で出版することが決まりました。青木氏は、英単語はフレーズで覚えるという考え方を持っており、ベストセラーの「英単語ピーナツ」がすでに南雲堂から出ています。

 青木氏との話し合いの結果、テーマ別の配列にすることやネイティブチェックを入れることなどが決まりました。このネイティブチェックで、文法的に間違っていなくても、ネイティブが書いたものでも質の悪い用例はボツとなりました。ボツとなれば、本書の性格上、別の用例を見つけ組み合わせを何カ所か換える必要が生じます。その差し替えた用例をまたネイティブチェックをするということが繰り返され、膨大な作業になり、そのため出版予定が2年以上遅くなってしまいました。しかし、徹底的なネイティブチェックを2人のネイティブにしていただいたおかげで、本書の英語はネイティブに十分に通用するものとなりました。このお二人にはとても感謝しております。

 ネイティブチェックだけではありません。とくにBook 4のModernの場合、使用頻度にこだわりました。Googleの検索機能を使い、たとえば、"whole globe" "global urbanization" "urban sociology" というような組み合わせのヒット数を全部調べていきました。そして、ヒット数の少ないものはどんどん差し替えました。またネイティブと話しあいながら、どれがよく使われる表現かを研究しました。ですからModernの用例は、役立つものがずらりと並んでおります。

 なお、音声版作成中、録音をお願いしたネイティブの方からも、英語として不自然な部分が指摘され、それも改良しました。この「3番目」のネイティブチェックを入れると、3人のネイティブがこの本をチェックしたことになります。

6. アプリ版の制作
 出版社との交渉で、アプリ版を作るべきだと出版社と交渉しましたが、当時の南雲堂はそういう方向では考えていませんでした。交渉の結果、アプリを作る権利をいただき、自費で作ることにしました。この制作には紆余曲折があり、最終的には、株式会社アリスが制作を引き受けてくださり、6年がかりでアプリ販売となりました。今後は、Renaissanceにつけた注釈をさらに充実させていくなどを計画しています。