英単語集の歴史と進化


 英単語集12冊を選んで解説し、英単語集がどのように進化してきたかを書いてみました。ご覧下さい。
 
1. 1966年以前
 この時期は「赤尾の豆単」の独壇場であった。

★『英語基本単語集』(赤尾好夫著)通称「赤尾の豆単」
初版1942年、語彙数 約3800語
 英単語集が出版されるまで、英単語を覚えようとするには、辞書をそのまま覚えていくしか手がなかった。そこに戦争中にもかかわらず『英語基本単語集』、いわゆる「赤尾の豆単」が登場する。これは当時としては画期的な参考書であった。アルファベット順に覚えるべき単語が並ぶ。ところどころ派生語や同意語なども載せている。戦後約25年間の英語学習に欠かせない単語集となった。
 
2. 1960〜70年代
 1960〜70年代で最も人気があったのは「出る単」である。読みやすさ、重要語という概念でベストセラーとなった。しかし、内容的には「奇跡の英単語」が群を抜いて優れた単語集であった。

★『試験に出る英単語』(森一郎著) 通称「出る単」「しけ単」
初版1967年 語彙数 約1800語
 アルファベット順を打ち破る英単語集、しかも大学入試重要語を出題頻度順に並べた。この単語集の特色は、その出題頻度順であることと、英単語を接頭語、語幹、接尾語で分類できるものは分類して覚えやすくしたことにある。また、重要語のみなので1800語覚えればよいという点と、単語の意味は1語に1つ覚えればよいという点で、覚えやすさも手伝って大ベストセラーとなった。以降、「出る単」のコンセプトを踏襲したような類似の英単語集がたくさん出てくる。私も一番最初に買った英単語集が「出る単」であった。

★『奇跡の英単語』赤版(長崎玄弥著) 通称「キセ単」
初版1975年(赤版としては1979年) 語彙数 約5000語
 試験に出る順というだけでは、覚える工夫がない。それに対し、記憶力抜群、英語力抜群の長崎氏が工夫を凝らして、1か月で5000語を覚えられるという大胆なキャッチフレーズで、難関大学受験にターゲットを絞った単語集が登場。連鎖式記憶、コロケーションで覚えるなどは画期的。記憶力の悪い私には、1か月で覚えることは無理だったが、多少英語が古い点を除けば、今でも十分に通用する価値ある一冊。レベルが高い。語彙数約2500語の青版もある。
 
3. 1980年代
 1980年代になるといろいろな本が出てきた。「出る単」が古くなって、それに代わる「出る順」の単語集が「ターゲット」である。また、高校ではWORD POWERを使っているところも少なからずあったようだ。

★『英単語ターゲット1900』(宮川幸久著) 通称「ターゲット」
初版1984年 語彙数1900語+基本語の盲点/接頭語・接尾語
「出る単」の単語が古くなってきた頃に登場した。「出る単」が1800語であったのに対し、こちらは1900語と露骨なまでに対抗意識が見える。ただ、相変わらず出る順で、初版には例文もなく、その点が批判された。そうした批判に応えてか、分冊の例文付き改訂版を出してきたところは立派。

★『WORD POWER 1500/3000/4500』(L. A. Hill著) 通称「Word Power」
初版1982年 語彙数4500語
 日本以外の出版社の英単語集。Oxfordの日本語一切なしの単語集。私たちの学校でも昔使っていた。ネイティブの視点で作られた、英語のみであるということが一部の教師にアピールした。しかし、日本の英語教育と合致しないコンセプト、語彙、方法が難点で、内容は評価できるが、使われなくなってきた。
 
4. 1990年代
 現在3大ベストセラーの「DUO」「速読英単語」「ピー単」が登場。英単語集は新たな時代に突入。そして桐原書店は、ターゲット別にたくさんの英単語集を出した。

★『速読英単語』(風早寛著) 通称「速単」
初版1992年 入門編基本語約750語、必修編必須語約1900語、上級編上級語約900語
 速読教材と単語集を合体させたようなつくりが売りの単語集。単語を文章で覚えるというのがこの単語集の特徴。ただし、説明は英和辞典の域を出ていない。文章があり、そこからいくらかの重要単語を抜き出して覚えるというスタイル。やや残念なのは、上級編の文章で覚えるべき語が少ないところ。文章を読むのに時間がかかりすぎると考えるのか、あるいは文章も読めて一石二鳥と考えるのかで評価が分かれる。DUOに対抗して売れている本であり、大勢の支持を得ている。

★『DUO』(鈴木陽一著) 通称「DUO」
 初版1994年 語彙数単語5025語、熟語2841語(DUO 3.0)
(そのうち、見出し語1572語)
 1993年に英単語集「WAO!」が登場。同じコンセプトで語彙数が多い「DUO」が別の出版社から翌年登場。例文に覚えるべき単語や熟語を詰め込み、効率がよい、負担が軽減というのが売り。品質が違うと銘打つ。ネイティブアドバイザーは15人。例文は1572語(熟語を除く数)しかなく、あとは所狭しと小さい文字で派生語や反意語、同意語など約3500語(熟語を除く数)が埋め込まれている。これは単に語彙数を増やすための手段にすぎないようにも見える。とは言え、現在一番売れている単語集だけあって、並の単語集より実践的であるのは間違いない。

★『英単語ピーナツ』(清水かつぞー著) 通称「ピー単」
初版1994年(金メダルまで) 語彙数各巻777組のコロケーション、合計2331組のコロケーション
 金・銀・銅メダルコースと称する3冊シリーズ。ピーナツは、2つの対を表し、動詞と名詞、形容詞と名詞などのコロケーションの象徴。「ピー単」の特色は、すべてコロケーションで覚えることと、テーマ別配列とした点にある。本格的なコロケーションによる英単語集。根強い人気でアマゾンで英単語集としては売り上げNo.1になった週もある(2009年)。

★『新標準英単語・熟語』(LSC研究会編著)
初版1993年 語彙数4000語
 見出し語があって、訳語があって、演習形式の例文がついている。テーマ別で易から難へという配列。この単語集は、はっきり言って、学校現場にターゲットを絞っていると思われる。無難な内容であり、例文と練習問題が付いている、さらに一括採用校にはテストも提供するなどが、学校の先生方のニーズに合致し、多くの学校で採用された。学校によってレベルもさまざまであることから、桐原書店はさまざまなレベルにあわせた単語集を用意している。
 
5. 2000年代
 新鮮味のあるメジャーな単語集はない。代りに、英単語集としては不十分ながら、実践的な単語集が登場。英会話のジャンル、資格試験用単語集をはじめ、いろいろな単語集が出るものの、「DUO」「速単」「ピー単」に対抗できるものはない。

★『ネイティブスピーカーの単語力』・他(大西泰斗・ポール・マクベイ著)
初版1999年 語彙数 基本動詞編・動詞73語、動詞トップギア・動詞393語
 従来の単語集とは違い、単語の意味の違いを説明しながら語彙を増やすという本が何種類かでてきた。網羅的ではないが、基本語を含む動詞をしっかりと身につけるのには、こうした本が役立つ。とくにおすすめはネイティブスピーカーシリーズの基本動詞編と動詞トップギアの2冊。ネイティブスピーカーとタイアップして、日本人の弱いところに切り込んでいる。軽く読めるのがよい。他に、
「似たもの動詞」(Ruth Fallon著)
「似ている英単語使い分けBook」(清水健二著)
「英語基本動詞類語マニュアル」(田中実編著)
「英単語使い方事典」(ケリー伊藤著)
「英単語ネットワーク」(アルク)
などもこの類である。こうした本はどれも読む価値がある本である。

★『ダジャ単』(藤井秀男著) 通称も「ダジャ単」
初版2004年 語彙数2400語
 英単語をすべて連想やダジャレで覚える単語集。これを邪道と言うかもしれないが、こういう本で覚えないと覚えられない人も世の中にはいるのだ。「字を引く書なり」=dictionaryなどというのは昔からあったが、2400語とは著者も頑張った。中には覚えにくいのもあるが、単なるダジャレだけに終始していない点は評価できる。
 
6. 2010年代
 果たして2010年代の単語集はどのようなものが出現するであろうか。

★『英単語レボリューションシリーズ』(宮岸羽合編著)
初版2010年 語彙数4296語
 久しぶりに英単語集にパラダイムシフト起こすべく、今までにないタイプの単語集が登場。英単語集はどうあるべきかを徹底追及。編著者の勤務する学校の高3の選択授業で改訂につぐ改訂を重ね、生徒たちとともに育った、現場の視点で作られた単語集。全用例つき。しかも、用例はすべて良質でスリム。動詞に正面から取り組み、コロケーションを重視。しっかりとしたネイティブチェックとGoogle検索を使ってヒット数の高い組み合わせのものを厳選。コンピューターを駆使して出来た新しい時代の英単語集。

★「英単語レボリューション」は「速単」がかかげる理想的な英単語集の8項目に照らし合わせてみると、以下のようになる。

1. 文脈の中で覚えられること
 「英単語レボリューション」はテーマ別になっており、その中でのコロケーションは、文脈の中で覚えることに匹敵する、あるいはもっと効率よく覚えられる。

2. 文脈形式を取りながら、必要な語を完全に網羅していること
 「英単語レボリューション」は必要な語数を的確に維持している。速単が重複語を含めて3500語に対し、レボ単は重複を含めず約4300語。難関大学受験にはこの程度は必要なはず。

3. 飽きずに、反復練習ができること
 「英単語レボリューション」の用例はかなり面白いと、生徒の間では定評である。また、ひと目で役立ちそうな内容だとわかるので、反復練習がしやすい。さらに、4冊を通して、動詞の用例は3つ、名詞は2つ登場。復習しながら覚えられるように工夫されている。

4. 毎日無理のない量を繰り返せること。
 ページごとに区切られているので、覚えるペースがつかみやすい。無理のない量を効率的・計画的に覚えられる。

5. 見やすいこと。
 カラーデザインを採用。また、並んでいる品詞は同じなので、いちいち動詞だとか名詞だとか書く必要がなく、すっきり。発音記号もうまく色を使っているので、見た目邪魔にならない。色別で訳語も見つけやすい。

6. 場所を選ばないこと。
 ここで紹介したどの単語集よりも小さな新書判サイズ。ページ数も128ページで最も薄い。だから、持ち運びも便利。場所を選ばないという点では、この本の右に出るものはない。

7. ターゲットが明確であること。
 難関大学受験完全対応。TOEFLやTOEICなどの資格試験にも威力を発揮。留学準備にも役立つ。ターゲットは鮮明。

8. 数年おきに部分改訂を行うこと 
 出版されたばかりなので、現在はどの単語集よりも新しい。今後、部分改訂は必要だろうと思っている。